いまさら聞けない 歯科インプラント 人生100歳時代では避けては通れず

本当に怖いのか?①

厚労省によると2016年時点で、自分の歯が20本以上残っている85歳以上の人の割合は1993年の2.8%から25.7%に伸びそうだ。
その一方で、100歳以上の人数は6万5692人で46年間増加中だ。つまり、寿命は延びたが、依然として少なからぬの人が人生後半に入れ歯か歯科インプラント(以下インプラント)を選択せざるを得ない状況には変わりがない。
歯を失うことは、胃腸の負担が増すだけではない。有害物質や病原性の細菌から身を守ってくれる唾液の分泌を失わせ、味覚や発音、顔の表情もおかしくさせる。噛むことによる脳への刺激がなくなるため、認知症の発生率が高く、余命が短くなる傾向がある。健康的に暮らすには、自分で噛める歯を持つことが必要不可欠なのだ。
そこで、歯科医向けのインプラント講師を務める自由診療歯科医師で、「八重洲歯科クリニック」(東京・京橋)の木村陽介院長に話を聞いた。
インプラントの相談に訪れる患者の多くが最初に口にするのは、「インプラントは怖い」だという。
ここ数年、ずさんな治療が報じられた結果、「神経が切断されて後遺症が残る」「痛い」「腫れる」「際限なくお金がかかる・・・」などの不安が患者に広がっているという。しかし、インプラントはきちんとした診査・診断を行い、状態にあった手術を計画通りに行えば、天然の歯に近い機能を回復することも可能だ。
「歯科インプラントの施術後に起きる主なトラブルは痛み、腫れ、埋入箇所の違和感、出血やしびれなど。特に骨の残存量の少ないところに無理してインプラントを入れようとすると、下顎は神経を傷つけるリスクがあり、上顎は人工骨による上顎洞炎のリスクがあります。今までのインプラント治療は顎の骨のどこを削ってインプラントを立てるか決めるため、歯肉を切って、骨を目視しながら行う手術が主流でした。
最近はサージカルガイドを用いた手術も行われるようになり、より安全な手術になっています」サージカルガイドとはインプラントを顎の骨に埋入する際、ドリルの着地点と角度を正確な方向に導き、ドリルがぶれないように保持する医療器具だ。
これを作るため、事前に患者の顎の石膏模型を作り、CT撮影する。
そのデータをインプラント専用の高精度解析ソフトで解析して、熟練した専門の歯科医師が一人一人患者に最適なインプラント手術計画を決定し、サージカルガイドを作る。
すべての患者さんにサージカルガイドが導入できるわけではない、しかし、適応できる患者さんに使用すれば、経験の少ない歯科医師でも安全にインプラント治療が行えるようにいるのだ。

※このコラムは、院長 木村陽介が、日刊ゲンダイで連載したものを掲載しております

コラムシリーズ
いまさら聞けない 歯科インプラント
01 本当に怖いのか?①
02 本当に怖いのか?② 治療は痛くない
03 値段差は何の差?① 材料、設備
04 値段差は何の差なのか?② 実績、肩書は信頼できるのか
05 治療ができる人 できない人 糖尿病・高血圧でも普通の生活が送れていればOK
06 いつまでもつか? 世界最初のチタン患者は40年以上
07 治療後はどんなケアが必要か? 定期的な検診が重要
08 治療のタイミング? 噛めなくなったころ・・・
09 大学病院の方が安心か? 最後まで同じ歯科医師が担当しないかもしれない
10 義歯ではダメなのか? よりおいしく物が食べられる
11 歯科医師の選び方 口コミが一番